1972〜1973

カップに詰まったアイデアを特許・実用新案として登録する。

カップ、めん、具に多くのアイデアが詰まった「カップヌードル」。カップは3つの機能を備えており、輸送されて店頭に並ぶ時はパッケージ、湯を注ぐ時は鍋、食べる時は食器の役割を果たす。発売前に特許と実用新案を出願していたが、類似品が出回った。
日清食品は、知的財産権を守るために訴訟を提起し、最終的に和解が成立した。

「カップヌードル」は知恵のかたまりと言われ、カップ、めん、具などに画期的なアイデアが詰まっているため、発売後、追随する商品が続出することが予測された。約10年前に、「チキンラーメン」がヒットして類似品が相次ぎ、特許係争に多くの時間と労力を費やすという苦い経験があった。
そこで、日清食品は、「カップヌードル」発売の半年前、1971 (昭和46) 年3月に、特許「容器付きスナック麺の製造法」と、実用新案「熱湯注加により復元するカップ入りスナック麺」を出願し、1978年9月に特許を、1982年4月に実用新案をそれぞれ登録した。
無益な争いを避けるため周到な注意を払っていたが、1971年9月の「カップヌードル」発売後、しばらくすると、多くの権利侵害の疑いがある商品が出回った。日清食品はこれらを生産・販売する企業に対して厳重に抗議するとともに、知的財産権を守るために、法的措置も辞さなかった。
これらの係争は、いずれの場合も和解により解決した。その後、特許の使用許諾を得てカップめんを製造した会社は27社に及んだ。

知恵のかたまり「カップヌードル」

1. 中間保持の構造

宙吊りのめん収納
めん塊は、上・下に空間を置いた宙吊り状態で、容器に密着して収められている。

a. 上部空間
カップが揺すられても具材がこわれないように、コンパクトな設計。

b. 側面補強
めん塊はカップと密着しているから、めん折れなどの破損がなく、カップの強度を高め、輸送中のトラブルを防ぐ。

c. 疎密のめん塊
宙吊りにされためん塊は、下がまばらで上になるほど密度が高い。これがめんの湯戻りを早める秘密。また、めん塊上部の具材が下へ落ちず、食欲を増進するきれいな出来上がりになる。

d. 下部空間
この空間に降りてきた熱湯は、めんを下からも包みこみ、全体をほぐしていく。

2. フタ
アルミ箔を張り付けたフタで密封されているので、光や水分を通さず、衛生的。

3. フリーズドライ
具材
新鮮なエビ、豚肉などをフリーズドライ製法で乾燥しているため、色、味、食感、形態を保ち、栄養素も変化しにくい。
具材の種類は発売当時のままだが、おいしさ向上のための研究が行われ、改良が常に加えられている。

保存料・合成着色料は不使用
フリーズドライ製法を使って水分を低くすることで、保存性が高まり、防腐剤などの保存料は使う必要がない。
合成着色料も一切使用していない。

4. 外装フィルム
カップは、薄いポリプロピレンのフィルムを熱風で収縮させるシュリンク包装されている。

5. 底部のタックシール
外装フィルムをはがしやすいように、底にシールを取り付けてある。はがした後は、熱湯を注いだ後の上ブタの固定に利用する仕掛け。

6. めんの太さ
3分間の湯戻し時間の制限の中で、めんのおいしさが最大限に引き出せるよう、めんの太さも計算しつくされている。

7. カップのデザイン
未来を見通して創ったロゴマークは、発売当時のまま。少しも古さを感じさせない。
デザイナーは、1970年日本万国博のシンボルマークを制作した大高猛氏。

8. 容器は一つで3機能
カップ容器は、①パッケージであり②調理器になり③食器になる。

容器素材
それまで食品容器に使用された事がない発泡スチロールを使用。カップ素材としての長所は、保温性が高いので、湯が冷めにくい。断熱性が高いので、手に持っても熱くない。

容器サイズ
片手で持てる大きさと、軽さ、座りの良さが充分に計算されたジャスト・サイズ。

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