2008.10

「移り香」事件。
他人事ではありません、移り香から学んだ教訓

「移り香」事件は、2008年10月23日の神奈川県藤沢市保健所による記者発表から始まった。「カップヌードル」を食べた消費者が薬品臭を感じて嘔吐。保健所の検査で微量のパラジクロロベンゼンが検出された。その日の夜、横須賀市でも同様の問題が発生し、その後14日間にわたって神奈川県警による調査が続けられた。11月6日の最終的な調査発表では、原因は消費者宅での「移り香」の可能性が高いと結論づけられたが、この問題を受けて、日清食品・中川社長は11月5日に臨時朝礼を開き、社員に向けて訓示を行った。

【中川社長からの「訓示」】
2週間にわたる「移り香」事件を受けて、今後、当社が真摯に行わなければならないことは、まず「食品と一緒に防虫剤、殺虫剤、芳香剤を置かないでいただきたい」とのメッセージを伝えることである。そのためのCM放映も開始した。決して、お客様に責任転嫁するのではなく、食品を食品として保管していただくための啓発活動である。

「カップヌードル」は、2007年4月より「ECOカップ」に改良したが、その理由は、環境への配慮の他、水蒸気へのバリア性の高さにもある。この容器は、紙にポリエチレンを貼り合わせており、湿気から中身を守るので、麺、スープ、具材の風味劣化を抑え、鮮度を長期間キープすることができる。「おいしい、の その先へ。」の品質向上を目指す意識を重視してのことであるが、消費者が食品と防虫剤を一緒に保管する危険性までは想定していなかった。だからこそ、今後は「正しい保存方法」を伝えることが当社の使命であると考える。

同業他社のウェブサイトにも、現在では保存方法の注意喚起が掲載されており、同様の問題を抱えていたことがうかがえるが、原因物質のパラジクロロベンゼンの混入を「移り香」と判定したのは当社「食品安全研究所」であり、これについては当社の努力の賜といえる。

「移り香」は、グループ各社の包材でも、いつ起きてもおかしくない食品業界全体の問題であるが、同時に、その可能性を調べることは各家庭でもできる。

こうした問題が起きたとき、各自がどういった行動を取るべきなのか。その参考となる言葉は、『NISSIN CREATORS SPIRIT』06*の「組織の壁を乗り越えろ。見て見ぬ振りをするのは卑怯者である」。困難な問題に直面したときこそ、自身の問題として立ち向かい、取り組んでいただきたい。また、お客様には充分にご理解いただけるよう、当社の考えをしっかりと伝え、グループのより良い未来につなげていけるよう頑張ってもらいたい。

*『NISSIN CREATORS SPIRIT』06:
組織の壁を乗り越えろ。見て見ぬ振りをするのは卑怯者である。
セクショナリズムという壁を作るのは組織ではない。あなたの度量である。越権行為は大いに結構。組織や立場に縛られず、会社にとっても何が大事かという高い視点で問題の解決に当たろう。もし他の職場の問題を見て見ぬ振りをするなら、あなたは卑怯者である。

【「移り香」事件。発生から解決までの14日間】
○2008年10月23日17時:神奈川県藤沢市保健所の発表
同市に住む女性が「カップヌードル」を食べ、薬品臭や舌に刺激を感じて嘔吐。保健所の検査で微量のパラジクロロベンゼンを検出。人為的混入の可能性もあり、県警が調査を開始。
○同日21時:日清食品・中川社長による記者会見 (藤沢の案件)
現在、事実関係を調査中。生産段階での混入は考えにくいが、関東工場で製造した「カップヌードル」 (賞味期限:2009年1月30日 製造所固有記号A/7) を自主回収。
○同日23時30分:神奈川県横須賀市保健所の発表
「CO・OPカップラーメン (しょうゆ味) 」2個からもパラジクロロベンゼンとナフタレンを検出。健康被害はなし。
○10月24日16時:日清食品・中川社長による記者会見 (藤沢・横須賀の案件)
関東工場の安全性についてビデオカメラで確認。当該物質は工場内には存在せず。
「移り香」について、横須賀の案件を含め4月以降21件の検出事案は「匂い」が移行したものであると「食品安全研究所」の検査で確認。保管についての注意喚起を実施。
○10月25日:『読売新聞』朝刊の記事
「藤沢・横須賀の案件は購入から1ヶ月間自宅に。近くに防虫剤・芳香剤があった」
○10月28日:佐賀県生活衛生課の発表
佐賀県で「シーフードヌードル」「カレーヌードル・ミニ」から、パラジクロロベンゼンを検出。
○10月23日~29日:当社工場への保健所検査の結果発表
関東工場、滋賀工場、下関工場、嵐山工場への保健所検査の結果、パラジクロロベンゼンはいずれの工場にも存在せず、製造工程で当該物質が混入したとは考えにくいと結論。同一ロット品のいずれからも、パラジクロロベンゼンは不検出。
○10月30:当社新聞・ホームページ・テレビCMにて告知 (~11月9日)
○11月4日:報道発表
「東洋水産・エースコックにも防虫剤クレーム」「防虫剤メーカーも対応開始」
○11月6日:神奈川県警が藤沢市・横須賀市の案件で調査結果を発表
神奈川県警は、外部混入の可能性は低く、消費者宅での保管時に防虫剤の匂いが移ったものとみられると発表。

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