CFOメッセージ
CFOメッセージ
真のグローバル企業となるために戦略的なキャピタル・アロケーションによって企業価値を高めていく
日清食品ホールディングス株式会社
執行役員・CFO
矢野 崇
既存事業の強化とインオーガニックな成長によって2030年度の利益率目標を前倒しで達成
「中長期成長戦略 2030」のスタートから3年目となる2023年度は、堅調な業績であった過去2年から、さらに成長が加速し、売上収益は前期比+9.5%・637億円の増収と大きく伸長、過去最高の7,329億円となりました。既存事業コア営業利益は806億円と、前年度から+33.9%・204億円の大幅増益となったことで、足元3年間のCAGR(年平均成長率)は24.4%と、目標としていたMid-single Digitでの成長を大きく上回る結果となりました。また、ROEは11.7%と、こちらも長期的な目標水準としていた10%を上回る実績となりました。
単位:億円 | 2023年度 決算開示ベース | ||
---|---|---|---|
実績 | 前期比 | ||
増減額 | 増減率 | ||
売上収益 | 7,329 | + 637 | + 9.5% |
既存事業コア営業利益 | 806 | + 204 | + 33.9% |
営業利益 | 734 | + 117 | + 31.9% |
親会社の所有者に帰属する当期利益 | 542 | + 94 | + 21.0% |
既存事業コア営業利益率 | 11.0% | + 2.0pt | − |
営業利益率 | 10.0% | + 1.7pt | − |
親会社の所有者に帰属する当期利益率 | 7.4% | + 0.7pt | − |
セグメント別に見ていきますと、国内即席めん事業は堅調、国内非即席めん事業と海外事業は飛躍的な成長を遂げました。
まず、国内即席めん事業ですが、2年連続で実施した価格改定が市場に浸透したほか、高付加価値商品が好調だったこともあり、資材コストは引き続き増加傾向であったものの、増益に転じました。
国内非即席めん事業は、主に日清ヨークと湖池屋が増益を牽引しました。要因として、両社とも機動性の高さを発揮し、マーケットニーズの変化を的確に捉えた高付加価値商品をスピーディーに開発できたことが挙げられます。例えば、日清ヨークでは健康維持に重要な“睡眠の質”を改善する「ピルクル ミラクルケア」など、健康増進に関わる商品がシェアを着実に伸ばしています。湖池屋もこれまでにはない“プレミアムなポテトチップス”のマーケティング展開を進めてきたことが、若い方を中心としたニーズにフィットしています。これも、食事を減らして間食を食べる方が増えてきているという市場の変化を捉えたものです。また、日清食品の強みであるマーケティング力をグループ横断的に展開した結果、CM戦略なども奏功し、両社ともブランドイメージが高まりました。
海外事業は、売上収益が2,708億円・前期比+11.5%、コア営業利益で457億円・前期比+53.6%と大幅な増収増益となりました。エリア別にトップラインを見ますと、貢献度の大きい米州地域が+14.5%だったことに加え、欧州 では+34.3%・アジア地域では+11.4%と、景気減速の影響を受ける中国地域以外は、いずれも2桁成長となりました。こうした飛躍的な成長は、コロナ禍を経て海外での即席めんに対するエントリーバリアが下がったことが寄与したものと考えています。新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延した際、海外のスーパーマーケットで食料品が品薄状態になり、お客さまが棚に残っていた即席めんを買ってみると、おいしく簡単に調理ができた。しかも、保存がきいて在宅勤務中の食事に適しており、パッケージフードなので安全な食品である、など即席めんのメリットを初めて知った人が多かったと考えられます。以後、従来即席めんを食べてこなかった国を中心に、1人当たりの喫食数が大きく増えてきました。
さらに、日本人が1人当たり年間約50食の即席めんを食べるのに対し、欧州では一桁台、米州でも10食台であり、欧米諸国の1人当たりGDPが相対的に高いことを考えると、今後も高付加価値商品の成長を期待できる市場と言えるでしょう。すでに米国では「Innovative Premium」をコンセプトに、即席めんの新しいスタイルやおいしさを追求したプレミアム商品を展開しています。それらを欧州にも展開し、1人当たりの喫食数を高めていきたいと考えています。また、喫食数がすでに多いアジア地域も、所得水準の向上に伴って当社が得意とする高級な袋めんやカップめんへのニーズが高まっており、こちらもプレミアム商品に力を入れていきます。
このように、一部のエリアだけでなく、アジア地域や米州・欧州など世界規模で拠点や工場を持ち、即席めん事業を展開しているのは日清食品グループだけです。これを強みに海外事業を強化していきます。
豊富なキャッシュを戦略的に活用し次なる成長ステージへ
財務面で言えば、当初計画していた2030年の利益目標水準を3年で達成したというのは大きな成果です。すでに当初計画値からコア営業利益が300億円程度上振れ、キャッシュフローの水準は、EBITDAでみますと、1,000億円水準まで伸長し、安定したキャッシュ創出が可能な事業基盤が整ったと評価しています。設備投資などへの自由度が格段に高まるなど、財務面での選択肢が増えたことは大きなメリットです。
今後は、キャッシュフローの有効活用によって戦略的成長投資とROEの一層の向上を両立させていきます。具体的には、中長期成長戦略における財務KPIを「オーガニックベースでMid-single Digitでの利益成長を継続」「ROE目標を2030年度までを目途に15%」に変更しました。ROE15%を達成するために、「オーガニックグロース投資」「インオーガニックグロース投資」「株主還元強化」の3つを組み合わせて実施していきます。仮にM&Aを活用したインオーガニックグロースがなく、オーガニックグロースでの5%程度の成長であっても、自社株買い等により目標達成にアプローチする方法も検討していきます。このケースでも、純有利子負債の水準は、「EBITDA対比2倍」を十分下回る水準にコントロールできると試算しており、財務安全性への懸念はないと考えています。
次のマイルストーンとして、日清食品グループは2030年までに「売上収益1兆円」「コア営業利益1,000億円」「時価総額2兆円」を目指すことを発表しました。これは、グローバル展開をしている食料品メーカーと肩を並べることを目標にする段階に入っているということです。「ROE15%」も最終目標ではなく、今後実施する設備投資が本格的に稼働し、将来的に利益成長が加速するタイミングではROEを20%台に乗せることも視野に入れた通過点である、ということを示したメッセージです。
2030年以降の業容拡大につなげるために、設備投資や株主還元拡充を行いながら、借入も活用し、資本効率を上げていきます。そして、次の成長に資する設備投資が2030年以降に花開き、売上や利益が増えてキャッシュインも増え、それを原資に借入の返済をしつつ、さらなる成長戦略を考える⸺そういった好循環が続いていく青写真を描いています。
ROE向上のためのキャピタルアローケーションの考え方
「コーポレート・バリュー・エンハンサー」として日清食品グループの成長余地を可視化していく
私は、財務・経理部門のビジョンを「コーポレート・バリュー・エンハンサー」と定義しています。つまり、私のミッションは、グローバルベースでの企業価値向上、ゴーイングコンサーンの維持とコスト最小化という、“攻め”と“守り”の両面から日清食品グループの価値創造を最大化させることにあると考えています。
資本コストや株価を意識した経営が求められるなか、当社グループの成長機会を可視化し、株主や投資家の皆さまに伝えていくことを重視したIR姿勢を評価いただき、日本証券アナリスト協会が毎年発表している「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」において、当社は「ディスクロージャーの改善が著しい企業」に選定されました。また、同選定の食品部門のランキングでも昨年の8位から5位に上昇しています。2023年度も、私も含めてIRのスタッフが国内外の拠点に赴き、現状の課題や成果を直接確認し、各国のマーケット環境を体感した経験に基づき、アナリストや機関投資家の方々に現地の生の情報をご提供することを通じて、コミュニケーションを深めました。また、生成AIや2024年物流問題などへの取り組みを伝えるための説明会や、5年ぶりとなるCEOと機関投資家とのスモールミーティングも開催したほか、初の試みとして社外取締役と機関投資家とのスモールミーティングも実施しました。さらに、アジアの市場性を理解してもらうためのアナリストや機関投資家を招いたタイ日清見学ツアーや最新鋭の次世代スマートファクトリーの関西工場見学会を催すなど、さまざまな活動に取り組みました。
今後も、アナリストや機関投資家の方々に対して、日清食品グループはグローバルな事業を展開しながら、長年国内で培ってきたブランディング・マーケティングの強みを発揮していること、独自のテクノロジーや多数の特許を有していること、これらを活かして付加価値の高い即席めんなどを積極的に展開していること、健康や環境に配慮した商品づくりにも意欲的に取り組んでいること、といった当社の強み・潜在成長力などを定量的・定性的に丁寧に説明し、皆さまからの期待を集める企業になっていきたいと思います。
私たちが挑む世界の市場には、それぞれの地域で日清食品グループがしっかりと利益を高めていけるだけの伸びしろがあり、私たちにはそれぞれの地域やお客さまの嗜好に合わせる商品開発力があります。さらに、それを支える資本政策なども社内で活発に議論されています。株主や投資家の方々に、より評価される企業グループとなれるよう、これからも強みを発揮した施策を実行し、目標を達成したいと考えます。
VALUE REPORT
2024
WHO日清食品グループとは?[3.66KB]
- グループ理念
- 社会価値創造History
- 日清食品グループの今
- 日清食品グループの6つの資本
- 日清食品グループのコアとなる強み
HOWどのように目指すのか?[9.79MB]
- 価値創造プロセス
- CSOメッセージ
- CFOメッセージ
-
成長戦略❶ 既存事業のキャッシュ創出力強化
- 国内即席めん事業
- 国内非即席めん事業
- 海外事業
-
成長戦略➋ EARTH FOOD CHALLENGE 2030
- 気候変動問題へのチャレンジ
- 資源の有効活用へのチャレンジ
- 成長戦略❸ 新規事業の推進
- 最適化栄養食のタッチポイント創出・拡大
- 最適化栄養食の新たな価値創造
- CHROインタビュー
- 人的資本の強化
- IRイベントレポート
- コーポレートガバナンス
- 取締役・監査役
データ [1.63MB]
- 財務サマリー
- 非財務サマリー/主な外部評価
- 即席めんの世界市場データ
- 会社情報・株式情報