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中長期成長戦略を深化させ、EARTH FOOD CREATORの実現を目指す

日清食品ホールディングス株式会社
取締役・CSO 兼 常務執行役員

横山 之雄

CSV経営を加速させた1年

2023年度は、前年度に引き続き、売上収益・利益とも過去最高を更新し、2期連続で2桁%の増益となりました。また、「中長期成長戦略 2030」の始動から3年間でのCAGR(Compound Annual Growth Rate /年平均成長率)は24%となり、中長期ターゲットであるMid-single Digitを大幅に上回る水準で推移し、2030年の利益目標を3年で前倒し達成する形となりました。

中長期成長戦略では、3つの戦略を掲げています。一つ目が、財務的にも組織的にも支えていく「既存事業のキャッシュ創出力の強化」です。海外事業+非即席めん事業のアグレッシブな成長によって利益ポートフォリオを大きくシフトさせ、中長期の成長を支える収益を上げるだけでなく業容拡大に見合う体制づくりや将来起こりうるさまざまな環境変化に耐えられるレジリエントな組織づくりを進めていくことが重要だと考えています。

二つ目が、環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」です。資源の有効活用と気候変動対応に関する定量的な目標を掲げており、目標達成に向け順調に進めています。また、三つ目の成長テーマ「新規事業の推進」では「完全メシ」シリーズなどの最適化栄養食の展開に取り組んでいます。こうした「Planetary Health」と「Human Well-being」に関する社会課題に取り組むことで、ビジョン「EARTH FOOD CREATOR」の実現を目指しています。

海外事業については高インフレのなかでプレミアム戦略が奏功、2023年で2030年目標を大きくクリアしました。なかでも海外事業の業績を牽引している米国は、プレミアム商品だけでなく、価格帯が手頃なベース商品でも利益を創出するなど、バランスよく収益が上げられる体制を構築しつつあります。今後も海外事業が利益成長の牽引役となり、利益ポ-トフォリオ内における構成比のさらなる拡大を見込んでいます。

非即席めん事業については、物価高でコストが上昇するなか、適正価格を見直し価格を改定し、収益を上げられる事業構造に転換できています。加えて、湖池屋の「プライドポテト」や日清ヨークの「ピルクル ミラクルケア」など、付加価値の高い新製品のヒットを生み出しており、その結果、営業利益率は大きく改善しています。

国内即席めん事業でも、原材料価格の上昇に伴う価格改定実施後も数量をキープしたことなどから増益に転換し、ブランド力の強さを改めてお示しできました。

このように、競争力のある商品構成と営業体制強化の両面からキャッシュ創出力を高められたことが、“2030年目標前倒し達成”という成果につながったと評価しています。

中長期成長戦略
重点課題と中長期成長戦略

目指すのは、グローバルトップブランド

中長期成長シナリオで2021年からの10カ年で想定していたMid-single Digitでの成長で到達する利益水準を2023年度に達成し、日清食品グループは新たな成長ステージに入りました。また、私たちが目指す分野でのグローバルトップ企業に必要な事業構造や組織体制が備わりつつあります。こうした状況を勘案し、今回、中長期成長戦略のKPIをアップデートしました。急成長を遂げた2023年度を起点に既存事業コア営業利益成長率をオーガニックベースで「Mid-single Digit(1桁台半ば)」%とするとともに、2030年度までを目途に自己資本に対する収益性指標である「ROE 15%」達成を新たな目標として設定しました。また、わかりやすい目標として、「売上収益1兆円」「既存事業コア営業利益1,000億円」「時価総額2兆円」を達成することを2030年度までのマイルストーンとして設定しました。ROE 15%は決して高い目標数値ではありません。より長期的な視点では20%を目指さなければならないと考えています。

私たちの強みは、世界の各地域にまたがる事業ポートフォリオを保有していることです。今まで成長を牽引していた中国地域は不況により厳しい状況が続いていますが、足元では米国や欧州地域の成長が加速しています。今後は、アジア地域の成長が期待されています。このようなグローバルポートフォリオミックスを実現したことにより、常に世界のどこかのエリアが成長を牽引していける状態となり、Mid-single Digitの成長を維持していくことが可能だと考えています。

一方、資本効率をどう高めていくかも重要です。日清食品グループとして中長期的に確実に成長できる投資を行い、さらに収益レベルを引き上げていくというサイクルに乗せることが、着実な株主還元の拡大につながっていく、このような構想を描けるようになってきました。

私は、かねてからCSOを「コーポレート・サイエンティフィック・オーケストレーター」と位置づけ、経営全体を俯瞰し、指揮することを最大のミッションとしています。今後も、日清食品グループはフードテックを駆使してマーケティングとイノベーションから生まれる食文化の創造という“アート”を、事業会社や各機能部門の“クラフト”に適切かつ迅速に展開・実行されるような仕組みをつくっていきます。そのプロセスや事業構造などを分析・評価し、体系立てていく“サイエンス”を私たちコーポレート部門が担い、最大の効果を生み出していきたいと思います。

中長期成長戦略の成長イメージ
重点課題と中長期成長戦略
事業別の利益ポートフォリオの姿
重点課題と中長期成長戦略

高い成長を持続する“ヒト・モノ・カネ”に、次なる一手を

先ほど述べたように、海外市場では需要拡大をしっかり取り込むことができましたが、潜在ニーズはまだまだあると見ており、今後も生産体制強化などの体制整備に取り組んでいきます。新しい工場を立ち上げることで、既存の商品はもちろん、フードテックなどを活用した新たな高付加価値商品を提供するチャンスも広げていきます。

エリア別に見ると、アジアでは、とりわけインドが人口増加や経済伸長の面で成長が期待されています。また、欧米では米国だけが成長エリアというわけではなく、メキシコやブラジルといった中南米エリア、加えて欧州でも増加する需要を取り込めると見ています。というのも、各国とも、年間で1人が何食即席めんを食べるか、という指標である1人当たり年間喫食数が日本に比べて少なく、1年で数食程度という国も存在します。私たちの商品を通じて即席めんに触れてもらえれば、チャンスは広がっていくと考えます。それぞれの地域ニーズに即した商品展開とブランドの浸透を図り、しっかりと足場を築いていきたいと思います。

成長を加速させるためには、“ヒト・モノ・カネ”をさらに効率的に配賦、強化していく必要があります。足元の業容拡大によってキャッシュフロー、つまり“カネ”の水準は引き上がり、米国やブラジルで製造拠点を増設するなど、“モノ”の強化に対しても、順次手を打っている状況です。

残りの“ヒト”の強化は、より柔軟で強靭な組織づくりに必須の要素であると思っています。その一環として「日清流Job型」という人事制度を2024年4月にスタートさせました。この「日清流Job型」は職務内容を明確に定義し、その業務内容や役割に適した人材を採用・配置することを目的としています。グローバルな事業展開に対応し日清食品グループの社内で専門人材を育成することはもちろんのこと、外部からさまざまな分野で傑出した人材を採用し、入社後すぐに活躍してもらうことも可能となりました。今後は、非管理職や海外の人材にも裾野を広げていこうと考えており、すでに売り手市場であるDXやデータドリブン関連の人材は “Job ”と“市場性”に沿って採用するなど柔軟な体制ができつつあります。

社会的インパクトを定量化し、数値に裏打ちされたCSV経営へ

世界規模で事業を拡大し、ブランドの重要性が高まるなか、“日清食品グループの企業価値の最大化”をどう捉え、評価し、推進していく仕組みの構築が必要です。この問題意識のもと、2021年から「ESG(非財務価値)と企業価値の関係性」に関する定量・定性分析への取り組みを開始しており、すでに非財務価値とPBR(財務価値)、ESGアクションと企業価値(株価)の関係性について、ストーリーの形で明らかにしてきました。

このなかで、人的資本の領域では、各施策の効果を定量化する「Value Tree Analytics(VTA)」分析を実施し、人事施策が従業員のエンゲージメント向上を実現し、企業価値向上につながっていることを検証しています。3年目となる2023年度は、これまでの分析手法をさらに深化させながら、新たに「日清食品グループが社会にもたらすインパクト」を定量化する「インパクト加重会計※1」に挑戦しています。これまでは「非財務と財務価値」の関係性に着目し、グループのESGが財務的にプラス評価できる点のみを確認してきましたが、今後は「非財務と社会的価値」の関係性にも着目し、企業の活動が従業員・顧客・環境などの社会に対して“ポジティブ/ネガティブの両面”からどのようなインパクトをもたらしているかという点の可視化に挑戦していきます。

例えば、「従業員インパクト」では、当社グループの雇用による社会的インパクトはハーバード・ビジネス・スクール(HBS)が算出した米国企業の水準※2と比較しても遜色ないという結果が出ています。現在取り組んでいる人的資本施策の根拠になるため、大きな意義があります。

また、「製品インパクト」ではパーム油の調達においてRSPO認証※3を活用することで、CO2排出削減や生産者の人権問題にも貢献し、社会にポジティブなインパクトを創出できることが確認できています。認証品の調達コストよりも社会的インパクト(金銭価値換算)が上回ることも確認できました(詳細はP44)。こうした一連の定量化分析は、日清食品グループが取り組むCSV経営に一定の根拠を与え、実効性を高めていく上での指標となります。今後も分析データを積み上げながら分析精度を高め、データの信ぴょう性を高めていきます。ゆくゆくは短期・中長期の施策に関する優先順位づけをする判断材料にも活用してCSV経営を進化させていきたいと考えています。

CSOに就任して以降、私は「変化の激しい世の中で、着実に成長していける企業とは何か」と考えながら、組織づくりや施策に取り組んでいます。私たちの活動は、利益だけではなく、人や地球など、さまざまなステークホルダーに対して意味のあるものでなければなりません。今後もマルチステークホルダーにしっかりと向き合った経営を推進していきたいと考えています。「成長一路、頂点なし」を胸に、ハングリーに、そしてレジリエントに成長し続けてまいります。

  • HBSの教授が中心となり設立されたIWAI(Impact-Weighted Accounts Initiative)において開発された会計手法。従来の財務諸表に加えて社会的なインパクトも経営上の意思決定に組み入れることを目的にしている
  • 総賃金に占めるインパクト比率。総賃金がどの程度社会的インパクトにつながっているかを算出
  • 持続可能なパーム油の生産と利用を目的に、製造・加工・流通過程にいる企業を対象とした認証制度
ESGインパクトの定量化分析
重点課題と中長期成長戦略
従業員インパクトの他社比較(総賃金に占めるインパクト比率)
重点課題と中長期成長戦略

VALUE REPORT
2024

WHO日清食品グループとは?[3.66KB]

  • グループ理念
  • 社会価値創造History
  • 日清食品グループの今
  • 日清食品グループの6つの資本
  • 日清食品グループのコアとなる強み

HOWどのように目指すのか?[9.79MB]

  • 価値創造プロセス
  • CSOメッセージ
  • CFOメッセージ
  • 成長戦略❶ 既存事業のキャッシュ創出力強化
    • 国内即席めん事業
    • 国内非即席めん事業
    • 海外事業
  • 成長戦略➋ EARTH FOOD CHALLENGE 2030
    • 気候変動問題へのチャレンジ
    • 資源の有効活用へのチャレンジ
  • 成長戦略❸ 新規事業の推進
    • 最適化栄養食のタッチポイント創出・拡大
    • 最適化栄養食の新たな価値創造
  • CHROインタビュー
  • 人的資本の強化
  • IRイベントレポート
  • コーポレートガバナンス
  • 取締役・監査役

データ  [1.63MB]

  • 財務サマリー
  • 非財務サマリー/主な外部評価
  • 即席めんの世界市場データ
  • 会社情報・株式情報
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