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2007.03.27 日清食品

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日清食品 食品安全研究所 ヒト細胞変異原性試験法(NESMAGET)の反応様式を解明

-食品に含まれる発がん性物質の新しい検査法-日清食品 食品安全研究所ヒト細胞変異原性試験法(NESMAGET)の反応様式を解明

日清食品株式会社(社長:安藤宏基)の「食品安全研究所」(滋賀県草津市)は、弊社が独自に開発した遺伝子(DNA)の損傷を引き起こす変異原性物質を確認する方法「遺伝子発現を指標としたヒト細胞変異原性試験法」の反応様式(反応性の特徴)を解明、その内容を2007年3月28日(水)〜30日(金)に開催される「日本薬学会第127回年会」(富山国際会議場、富山市総合体育館など)で発表します。

背景

発がん性物質の多くは遺伝子(DNA)に変異を起こす変異原性物質であることが知られています。変異原性物質を検出する既存の試験法として、細菌を用いた試験法や哺乳類細胞を使用した試験法などがありますが、これらの検査法には種差、操作法の煩雑さ、試験期間の長さ(数日〜数週)などさまざまな問題点があります。そこで弊社ではこのような問題点を解決する代替方法として、ヒト細胞を用いることを大きな特徴とする「DNA修復遺伝子p53R2の発現を指標とした簡便な変異原性試験法(NESMAGET)を2004年に独自に開発しました。現在は食品添加物を中心に約400検体の分析を完了し、既存の試験法や文献既知情報との同一性を精査している状況です。

ヒト細胞変異原性試験法の反応様式の確認

ヒト細胞変異原性試験法は、2004年にヒト乳がん細胞を用いたレポータージーン試験法として確立したものです。本試験法では多種多様なDNA損傷形式を有する化学物質を検査するに当たり、[1] 化学物質により反応性に大きな差があること、[2] 一般的な変異原性試験で反応する化学物質とは反応性が異なることがわかってきました。そこで、約20のDNAに作用する機構が異なる化学物質を用いて、本試験法がどのようなDNA損傷形式に反応しやすいか(反応様式)を調べ、本試験の特徴を解明しました。

DNAに作用する機構が異なる化学物質の検査結果

(1)DNA二本鎖切断を引き起こすトポイソメラーゼII阻害剤、インターカレターにおいて、強い陽性反応を示しました。
(2)DNA一本鎖切断を引き起こすトポイソメラーゼI阻害剤、DNA架橋や点突然変異を引き起こすアルキル化剤、また微小管重合阻害剤において、陽性反応を示しました。
(3)代謝拮抗薬やヒストンデアセチラーゼ阻害剤において、陽性反応を示しませんでした。

本試験法はDNA二本鎖切断作用を有するDNA損傷形式を有する化学物質の検出に優れた方法であることが示されました。DNA二本鎖切断は放射線などで検出されるDNA損傷形式で発がんに普遍的に見られ、その修復に失敗すると染色体転座、欠失、増幅を引き起こすことが知られています。このように発がんに密着した強いダメージを受けた状況を検知できることから、本試験法の優位性があると考えられます。

以上のことから、本試験法は医薬品、食品由来のあらゆる化学物質の変異原性を検出するための、よりヒトに近い状態を知りうるファーストスクリーニングとして有用であることが示唆されました。

弊社製品への安全性向上への寄与について

アクリルアミドやアカネ色素に代表されるように、食事として日常的に食していたもののなかから、新たに発がん性の疑いが明らかになることがあります。弊社では、こうした事例を鑑み、発がん性リスク評価の一環として、弊社製品の原料について本検査法で変異原性を評価し、安全性情報のデータベース化を進めています。今回、ヒト細胞変異原性試験法の特徴を解明したことにより、その精度を充実させて参ります。

(ご参考)

《ヒト細胞変異原性試験法(NESMAGET)の原理》
細胞分裂時に重要な役割をするp53タンパク質がDNAに損傷を受けると2リン酸化され、DNA修復遺伝子p53R2を発現します。この遺伝子発現をルシフェラーゼ(ホタルの発光酵素)に置き換え、そこに基質を加えて、発光量を指標として変異原性を測定するもの。

NESMAGET:Nissin’s Evaluation Systems for Mammalian GenoToxicity
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