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2008.11.11 日清食品ホールディングス

お知らせ

「発がんプロモーター短期検出法」開発のご案内

-食品に含まれる発がん性物質の新しい検査方法-「発がんプロモーター短期検出法」開発のご案内

日清食品ホールディングス株式会社 (社長・CEO:安藤 宏基) は、食品に含まれる発がん性物質の新しい試験法「発がんプロモーター短期検出法」を開発し、11月13日(木)、14日(金)に開催される「日本動物実験代替法学会21回大会」で発表致します。

開発の意図

近年、今まで食事として食べていたものの中で、食品の調理加工段階で生成される「アクリルアミド」や食品着色料の「アカネ色素」などが、新たに発がん性の疑いがある物質として明らかになっています。
発がん性物質には、体内の遺伝子に変異を直接引き起こすものと、遺伝子の変異を引き起こさずに他の発がん性物質の発がん作用を促進するものがあります。後者の発がん性物質を検出する試験法として、動物実験以外では従来、「BALB/c 3T3細胞を用いた形質転換試験」(*1) が試験実績も多く、発がん性物質の検出能力の高さ、試験施設の能力によるバラつきが少なく安定した結果が得られるという点で優れているといわれています。
しかしながら、従来の試験法では、検査が長期にわたる上に簡便ではなく、多数の検査物質を対象とする検査には向いていませんでした。そこで弊社では食品に含まれる発がん性物質を短期間で、簡便に、低コストで検査できる新しい試験法「発がんプロモーター短期検出法」(NESTUP [ネスタップ] : Nissin’s Evaluation System for TUmor-Promoting activity)を独自開発致しました。
弊社では、この試験法を活用して、原材料の発がん性に関する安全性情報の集積を進め、安全性の更なる向上を目指します。また、来年度から、社外受託試験を予定しています。
なお、当試験法は現在特許出願中です。

(*1) 「BALB/c 3T3細胞を用いた形質転換試験」について
マウス繊維芽細胞由来のBALB/c 3T3細胞を用い、動物を使用しないで2段階発がんを再現できる試験法です。BALB/c 3T3細胞は、通常、単層の石畳状の形態をしていますが、発がん性物質を添加し、数週間培養すると、紡錘状に形態が変化した細胞の多層に重なり合った集団 (形質転換巣) が現われます。この形質転換巣の数を数えることで発がん性の有無やその強度を調べることができる方法です。

「発がんプロモーター短期検査法」の特長

(1) 25日間必要だった従来の試験法と比べ、3日間という短期間で試験可能。
(2) 従来の試験法と比べ、検査物質 (発がん性物質等) の量が1/10で試験可能。
(3) 顕微鏡観察等の必要がなく、客観的なデータが得られる。
(4) 多数のシャーレや培養液を必要とせず、低コストで試験可能。

「発がんプロモーター」と「発がんプロモーター短期検出法」の原理

・発がんプロモーター
正常な細胞ががん細胞になるまでには、いくつかの段階を経ると考えられており、この一連の過程を「多段階発がん」といいます。
1段階目は、「イニシエーター」と呼ばれる発がん性物質が、遺伝子に変異を起こす段階 (イニシエーション作用) です。
2段階目は、「プロモーター」と呼ばれる物質や他の発がん物質が、傷ついた遺伝子細胞を増殖させる段階 (プロモーション作用) です。
2段階目以降に、重要な遺伝子異常が生じると、細胞はがん化します (プログレッション作用)。
「発がんプロモーター」は、それ自身が発がんを引き起こすのではなく、他の発がん物質による発がん作用を促進する物質をいいます。一般的には「発がんプロモーター」がなくなれば、傷ついた遺伝子細胞の増殖を促す作用もなくなると考えられています。

・「発がんプロモーター短期検出法」の原理
BALB/c 3T3細胞を用いた形質転換試験の、2段階目のプロモーション作用の評価段階でさまざまな「発がんプロモーター」を加え、これに対して特有の変動を示す遺伝子群 (マーカー遺伝子群) を発見したことに本試験法の画期性があります。
本試験法は、これらマーカー遺伝子群の発現量が増加した数を指標とすることで、試験結果を早期に予測できるため、発がんプロモーション作用の有無を調べるための、ファースト・スクリーニングとして適しています。
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