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2011.05.12 日清食品ホールディングス

お知らせ

中性脂肪消化吸収を抑制する新規乳酸菌の肥満抑制効果を確認

中性脂肪消化吸収を抑制する新規乳酸菌の肥満抑制効果を確認

日清食品ホールディングス株式会社 (社長・CEO : 安藤 宏基) の食品安全研究所 (滋賀県草津市) は、中性脂肪 (TG) の吸収抑制作用を持つ「ラクトバチルス ガセリNLB367 *1」が、肥満抑制効果と2型糖尿病 *2 改善効果を示すことを、高脂肪食で肥満を誘導したマウスを用いた研究で発見しました。
この研究成果を2011年5月13日(金) から15日(日) にお茶の水大学 (東京都文京区大塚2-1-1) で開催される「第65回日本栄養・食糧学会大会」にて発表します。

1.研究の背景
近年、肥満やメタボリックシンドロームといった生活習慣病が増加しています。生活習慣病の予防には、食生活習慣の見直しが有効といわれており、特定保健用食品のような、食品の持つ体調調節機能 *3 が注目されています。
食品安全研究所では、これまでにも体調調節機能研究の一環として、普段の食事で簡単にとれる発酵食品 (乳酸菌) の機能に注目し、コレステロール低下作用を持つ乳酸菌「NLB163」*4 や、食品に含まれるTGの消化酵素「膵リパーゼ」*5 の作用を阻害しTGの吸収抑制作用を持つ乳酸菌「NLB367」*6 を発見するなどの成果をあげています。今回の研究は、高脂肪食で肥満を誘導したマウスに対する実験を行い、NLB367のTG消化吸収抑制による、肥満抑制効果の確認を行ったものです。

2.研究の内容
マウスに低脂肪食、高脂肪食およびNLB367 (2.5%および5%) を含んだ高脂肪食を12週間与えました。その結果、高脂肪食を摂取したマウスは、低脂肪食を摂取したマウスと比べて体重が1.2倍に増加し、肥満状態となり、高脂血症および高血糖状態となりました。これに対し、NLB367含有高脂肪食を摂取したマウスは、[1]TG消化吸収抑制による糞便脂肪排泄の増加、[2]血中TGおよびコレステロールの減少、[3]肝臓TGおよびコレステロール蓄積の減少、[4]内臓脂肪 (精巣周囲脂肪) の減少傾向が観察され、肥満抑制効果 (体重増加を約30%抑制) が認められました。また、[5]血糖値の減少、[6]インスリン抵抗性 *7 の改善もみられ、2型糖尿病改善効果 (血糖値を約24%減少) が示されました。
以上の結果から、NLB367がメタボリックシンドロームの予防や改善に有用であることが考えられます。

3.今後の予定
最近、プロバイオティクス *8 やバイオジェニックス *9 などの乳酸菌に代表されるように、乳酸菌の機能性が明らかにされ、乳酸菌による健康維持への期待がこれまで以上に高まっています。また、発酵乳以外にも乳酸菌の機能性を訴求した健康補助食品、発酵野菜飲料など、さまざまな形態の加工食品が市場でみられるようになりました。
弊社では今回の研究成果を、乳酸菌を使ったビジネスにつなげるとともに、新たな事業として発展させ、「食による健康」に貢献していく所存です。

《語句説明》
*1 NLB:Nissin Lactic Acid Bacteriaの略
*2 2型糖尿病:脂肪摂取の増加および運動不足による肥満などの生活習慣の乱れ (
(環境的要因) が主要原因である糖尿病で、生活習慣病の一種です。インスリン抵抗性 (詳細は後述の *7) をご参照下さい) および血糖値を適度に保つホルモン「インスリン」の膵臓ランゲルハンス島からの分泌低下により引き起こされます。他に、遺伝的要因 (自己免疫疾患など) により膵臓ランゲルハンス島が破壊され、インスリンが分泌されなくなることによって血糖値が上昇する1型糖尿病があります。日本人の糖尿病の95%は、2型糖尿病といわれています。

*3 食品の持つ体調調節機能:食品の栄養 (1次機能)、味覚(2次機能) に次ぐ、体調リズムの調節や、疾病の防止・回復などに係わる機能 (3次機能) を指します。

*4 乳酸菌NLB163:滋賀県特産の伝統発酵食品「ふなずし」から分離した乳酸菌の中から、強いコレステロール低下作用を示すラクトバチルス パラカゼイNLB163を発見。本件は、2006年6月19日のニュースリリースで発表済みです。
NLB163のコレステロール低下作用は、動物実験のほか、ヒト臨床試験でも確認されています (2009年1月19日のニュースリリースで発表済み)。

*5 膵リパーゼ:中性脂肪の消化吸収に関わる酵素で、膵臓で作られ、腸管内に分泌されます。

*6 乳酸菌NLB367:食品安全研究所で分離所有している乳酸菌の中から発見。本件は、2009年7月3日のニュースリリースで発表済みです。

*7 インスリン抵抗性:2型糖尿病の原因の一つで、インスリンが効きにくくなり、高血糖状態となります。肥満では、インスリン抵抗性になりやすくなります。

*8 プロバイオティクス:腸内菌叢 (ちょうないきんそう) のバランスを改善し、宿主 (人など) に有益な作用をもたらす微生物のこと。

*9 バイオジェニックス:腸内菌叢 (ちょうないきんそう) のバランス改善を介さずに、直接、血圧降下作用、免疫賦活作用、コレステロール低下作用、整腸作用、抗腫瘍作用などの体調調節に働く食品成分のこと。乳酸菌の中には、バイオジェニックスとして効果を示すものもあります。
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