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2006.03.28 日清食品

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食品に含まれる発がん性物質の新しい検査法

-食品に含まれる発がん性物質の新しい検査法-日清食品 食品安全研究所ヒト細胞変異原性試験法(NESMAGET)を拡充

日清食品株式会社(社長:安藤宏基)の「食品安全研究所」(滋賀県草津市)は、遺伝子(DNA)の損傷を引き起こす変異原性物質を確認する方法「遺伝子発現を指標としたヒト細胞変異原性試験法」を拡充、その内容を2006年3月28日(火)〜30日(木)に開催される「第126回日本薬学会」(仙台国際センター、せんだいメディアテークなど)で発表いたします。

開発の背景

近年、食品の調理や加工の過程で生成される「アクリルアミド」や食品着色料の「アカネ色素」など、食品中に存在する発がん性物質が問題となっています。発がん性物質の多くは遺伝子(DNA)に変異を起こす変異原性物質であることが知られています。変異原性物質を検出する既存の試験法には、DNAに作用する種々の特徴を考慮していろいろな方法が提案され、細菌を用いた試験法や哺乳類細胞を使用した方法などがありますが、これらの試験法は種差、操作性の煩雑さ、試験期間の長さ(数日〜数週)など様々な問題点があります。そこで弊社では、このような問題点を解決するため、DNA修復遺伝子p53R2の発現を指標としたヒト細胞を用いた簡便な変異原性試験法(NESMAGET)を独自に開発しました。この方法では
(1)細菌で検出できなかった変異原性物質が検出できる。
(2)顕微鏡観察などの煩雑な操作が必要でなく、操作が簡便である。
(3)96穴プレートを使用するため一度に多数のサンプルについて約一日で結果が得られる。
などの特長を有しております。

ヒト細胞変異原性試験法拡充の理由

本方法は先にヒト乳がん細胞を用いたレポータージーン試験法として確立しましたが、化学物質の様々な接触経路を考慮し、新たに「ヒト肝臓がん」「ヒト肺がん」「ヒト結腸がん」「ヒト胎児腎臓」由来の4種類のヒト培養細胞株を用いました。化学物質が体内に取り込まれる経路は様々で、多くは消化吸収された化学物質が血液にのり循環する他、肺であれば大気中から、腸など消化器系であれば食品から直接的にさらされることがあります。こうした様々な経路(肺、腸、肝臓など)に対応するため、肝臓、肺、消化器系など由来臓器が異なる4種類のヒト培養細胞株に拡充しました。

細胞株に対する数種の変異原性物質の影響に対する検査結果

(1)多臓器発がんを引き起こすMNNG(N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン)は、すべての細胞において陽性反応を示しました。
(2)高タンパク食品を過熱調理することで生成されるヘテロサイクリックアミンのひとつであるPhIP(2-アミノ-1-メチル-6-フェニルイミダゾ[4,5-b]ピリジン)は、乳がんおよび消化器系のがんの原因であると考えられています。この物質は、本試験法において、乳がんと結腸がん由来細胞のみで陽性反応を示したことから、由来臓器選択性があることが示唆されました。
(3)乳がん細胞が変異原性物質の検出力および反応性が高いことから、本試験に一番適していることが示唆されました。

本試験法は、医薬品、食品由来のあらゆる化学物質のヒトに対する変異原性を検出するためのファーストスクリーニングとして適用可能であることが示唆されました。

当社製品への安全性向上への寄与について

アクリルアミドやアカネ色素に代表されるように、今まで食事として食べていたもののなかから新たに発がん性の疑いが明らかになることがあります。弊社では、こうした事例を鑑み、当社製品の原料について本検査法で変異原性を評価し、安全性情報のデータベース化を進めていますが、ヒト細胞変異原性試験法を拡充させたことにより、より精度を充実させてまいります。


(ご参考)
<ヒト細胞変異原性試験法(NESMAGET)の原理>
細胞分裂時に重要な役割をするp53タンパク質がDNAに損傷を受けると2リン酸化され、DNA修復遺伝子p53R2を発現します。この遺伝子発現をルシフェラーゼ(ホタルの発光酵素)に置き換えて、そこに基質を加え、発光量を指標として変異原性を測定するものです。
NESMAGET: Nissin’s Evaluation Systems for Mammalian GenoToxicity
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